石油についてしらべよう!
まだ恐竜が生きていた、およそ2億年前から6,500万年前頃。海や湖には、小さなプランクトンなどの生物がいました。実は、こうした古代の生物が石油のもとになったと考えられています。
プランクトンなどの死がいが海や湖の底につみ重なり、やがて砂や泥でおおわれ、さらに何百万年、何千万年という長い年月がたつうちに、地下の圧力や熱によって石油に変化したと考えられているのです。といっても、石油は地下に湖のようにたまっているのではなく、岩のすき間に入りこんでいます。この岩を「貯留岩」といいます。
日本は、国内で使う原油(油田から掘り出したままの石油)の99.7%を、20以上の国々から輸入しています。地域別に見ると、約9割が中東で、続いてヨーロッパ、中南米となっています。国別では、サウジアラビアが全体の37%を占め、次いでアラブ首長国連邦、クウェート、カタール、ロシア、エクアドルと続きます。
2021年度には、こうした国々から合わせて約1億4,890万キロリットルの原油が輸入されました。
日本にも新潟県や秋田県などに油田があり、原油を掘り出していますが、その量はきわめて少なく、最高の生産量を記録した1992年度でも約98万キロリットルでした。2021年度の生産量は、約47万キロリットルです。これは日本国内で使われる石油の量の、ほぼ1日分にしかなりません。
ガソリンや灯油、軽油、重油などのことを、「石油製品」といいます。これらの石油製品は、原油を原料にして製油所でつくられています。
製油所には、「蒸留塔」という高さ50メートルのタワーがあり、その中へ約350℃に熱した原油を入れます。そうすると、ふっとうする温度の差によって、ガス分、ガソリン分、灯油分、軽油分、そして重油分に分けることができるのです。この操作を「蒸留」といい、分けられた石油製品のもととなるものを「留分」といいます。
蒸留塔で分けられたそれぞれの留分は、さらにいろいろな装置を通り、くらしや産業で使われるさまざまな石油製品となります。
石油には、大きく分けて「動かす力」、「熱」、「原料」という3つの働きがあります。日本では、2019年度に石油の約49%が自動車や飛行機、船の動力として、また約25%が工場やボイラーや家庭の暖ぼうなどの熱として、そして、約25%がプラスチックや合成せんいなどの化学製品の原料として使われました。
石油は、限りある貴重な天然資源のひとつです。「あとどのくらいあるのか」という目安には、「可採年数」が使われます。これは、ある年の年末の石油の埋蔵量を、その年の年間の生産量で割った数値です。2021年末の可採年数は、53年となっています。
ただし、石油の埋蔵量とは、油田にあるすべての石油の量ではありません。すでに発見されている油田に埋蔵されている石油のうち、今の技術で経済的に掘り出せる量をあらわしています。つまり、今後、石油のありかを探す技術や掘る技術が進歩して、新しい油田が発見されたり、今ある油田からより多くの石油を掘り出したりすることも期待できるのです。ですから、「あと53年で石油がなくなる」ということではありません。
日本は国内で使う石油の99%以上を輸入に頼っていますから、もし石油の輸入がストップしてしまったら大変です。そのため、十分な量の石油を貯えています。これを「備蓄」といいます。民間の石油会社では国内で消費する量の70日分の石油を、国では輸入量の90日分程度の石油※を確保することとされています。2022年3月末で232日分の備蓄があります。
備蓄基地は日本各地にあり、陸上のタンクに貯える方式、地下に掘ったトンネルに貯える方式、地面に埋めたタンクに貯える方式、海に浮かべたタンクに貯える方式、人工の島をつくりタンクに貯える方式などで、備蓄されています。
※原油の供給不足の対策として、産油国の国営石油会社に対し、東アジア向けの中継・在庫拠点として、日本国内の石油タンクを貸し出し、供給不足の際には、タンク内の在庫を日本向けに優先して供給することができる「産油国共同備蓄」という事業があります。輸入量の90日分程度の石油の中には、こちらの在庫量の2分の1も含まれています。
「バレル」は、石油の量をあらわす単位です。もともとは「たる」という意味の英語ですが、なぜ「たる」が石油の量をあらわすようになったのでしょう。
それは、今のようなドラム缶がなかった1850年代のアメリカで、石油をシェリー酒の空だるに入れて運んでいたからです。ちなみに、シェリー酒のたるには50米ガロン(ガロンも量をあらわす単位)が入りますが、運んでいるとちゅうで蒸発したりもれたりして、目的地に着いたときには42米ガロンに減ってしまったそうです。このため、現在の1バレルは約159リットル(42米ガロン)という、はんぱな数字になっています。
製油所でつくられた石油製品の輸送には、タンカー(船)、タンク車(鉄道)、タンクローリー(自動車)、パイプラインなどが使われています。
海の近くの油そう所(中継基地)や工場などへ、一度にたくさんの石油製品を運ぶのにはタンカーが適しています。まちの中にあるサービスステーションへは、タンクローリーが道路を走ってガソリンなどを運びます。そして、鉄道を使ったタンク車は、おもに内陸部の油そう所へ運ぶ場合に使われます。また、コンビナート内で工場などへ重油などを送る場合や、空港へジェット燃料油を送る場合には、パイプラインが使われています。
製油所からサービスステーション、そして皆さんの家庭に石油製品が届くまで、輸送にはたくさんの人たちが関わっているのです。
石油には、多くの種類の税金がかけられています。まず、輸入をするときに「石油石炭税」がかかります。ガソリンや灯油などの石油製品を輸入した場合には「関税」もかかります。次に製品になると、ガソリンには「ガソリン税」、軽油には「軽油引取税」、ジェット燃料油には「航空機燃料税」、LPガスには「石油ガス税」といった種類の税金がかけられます。
こうした二重、三重の税金によって、石油の税金は巨額になり、石油製品の販売価格を押し上げています。
きれいな空や海を守ることは、製油所の大切な仕事のひとつです。そのため、さまざまな装置を備えるなど、工夫や努力を重ねています。たとえば、製油所ではいおう分をほとんど含まない石油ガスなどを燃料として使い、燃やしたあとに排出されるガスからは、ちっ素の酸化物やチリなどを取りのぞいています。また、ほとんどの水を再利用し、川や海へ流すときには油分や泥などを取りのぞいています。空気も水も、きれいにしてから外へ出しているのです。
さらに、製油所の中やまわりに植物を植えて緑地帯をつくり、静かできれいな環境を保っています。この緑地帯の面積は、製油所全体の10%以上にもなります。
自動車やストーブなどで、ガソリンや灯油などを使ったときに環境を汚してしまっては困ります。そこで、製油所ではできるだけ環境にやさしい石油製品をつくることに努めています。たとえば、蒸留塔でつくられたガソリン分などからは、いろいろな装置によってベンゼンやいおうなどが取りのぞかれています。ベンゼンは健康によくない物質ですし、いおうは酸性雨の原因にもなっています。灯油も、においや煙が出ないようにクリーンにつくられています。
ガソリン、灯油、軽油、重油など、どの石油製品も、つくるときから環境のことをきちんと考えているのです。日本の石油製品の品質は、世界トップレベルといわれています。
製油所のタンクや装置は、大きな地震にもたえられるようにつくられています。1995年に起きた阪神淡路大震災のときにも、製油所の被害はほとんどありませんでした。
また、万一事故が起こっても、石油が海上や道路へ流れ出さないように、タンクの回りには「防油提」として土手やへいを設置しています。石油のつみおろしをするときには、タンカーを「オイルフェンス」で囲い、もし石油が流れ出ても、海に広がらないようにしています。
さらに、製油所には化学消防車や消防艇などを備えた独自の消防隊があり、日ごろから訓練をおこなって緊急時でも的確に対応できるようにしています。
石油連盟は、日本の石油の精製会社と元売会社でつくられている団体です。精製会社は、輸入した原油を製油所でガソリンや灯油、軽油、重油などの石油製品につくりかえる仕事をしており、元売会社は、製油所で生産した石油製品をサービスステーションや工場などに運び、販売する仕事をしています。つまり、石油製品の製造業者と卸売業者といえます。
石油は私たちの生活を支えるエネルギーですから、安定して効率よく供給することが日本にとって、とても重要な課題です。この課題にこたえるため、石油連盟は国内や海外の石油に関する情報を正確につかんで適切な対策を行うこと、エネルギー源としての石油の重要性を広く訴え、消費者の皆さんの理解を得ることなどを、おもな仕事内容としています。